地中熱ヒートポンプ導入事例 [公共施設] ニセコ町の取り組み

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国際・環境リゾートニセコ町がとりくむ
30年先の未来

お話を伺った片山健也町長

北海道ニセコ町は東に国立公園羊蹄山、北に国定公園ニセコアンヌプリの山岳に囲まれ四季折々の壮大な景色が有名です。豊かな地域資源を守りながら、「住むことが誇りに思えるまち」を目指し、「ニセコ町まちづくり基本条例」を策定するなどさまざまな地域経営に挑戦してきました。少子化が叫ばれる中、15年以上も定住人口が増え続けるニセコ町は視察が多い自治体としても有名です。特筆すべきは外国人移住者の多さ。パウダースノーの雪質にスキーヤーが集ってきたのをきっかけに今では良質な投資が進み、国際リゾート都市としても注目を集めています。こうした「環境創造都市」をテーマにした取り組みが評価され、2014年には、国の「環境モデル都市」に選定されました。

熱分野を中心に低炭素なまちづくりを目指す

ニセコ町では、平成27年3月に「ニセコ町環境モデル都市アクションプラン」を策定しました。徹底して水資源を守ること、再生可能な地域資源を最大限に活用すること、それにより二酸化炭素の排出量を削減しエネルギーも経済も循環しながら発展していく地域モデルの実現を目指したものです。ニセコには美しい自然と”農”のある暮らしがあり、豊かな資源が眠っています。限りない愛着を持つ人々が住み、全国から”尊敬とあこがれ”を集めています。豊かな自然景観を守り、町民のいのちと暮らしの豊かさを育む町でありたいと考えます。2050年には二酸化炭素86%削減を目標に、町ぐるみで取り組んでいます。

木材である自然素材の断熱材で高気密化を実現。
地中熱ヒートポンプ10kW×2台のユニットが導入されています。

ニセコこども館

寒冷地の大きな課題は冬の暖房のエネルギー転換。ニセコ町は公共施設建設時には積極的に熱分野に再生可能なエネルギーを導入しています。2016年に完成した学童保育所と放課後子ども教室が一体となった「ニセコこども館」は、ニセコ産カラマツの集成材、道産のカバ材を活用し、断熱材もグラスファイバー製ではなく木質繊維でできた天然素材の製品を採用、徹底して環境に配慮し高気密化を実現しました。熱源にはサンポットの地中熱ヒートポンプシステムを採用し、二酸化炭素の削減を目指しています。

ニセコ町民センター

地域のコミュニティー・センターであるニセコ町民センターは、会議室や集会場として機能しています。ニセコ町の商業地域に位置し、ニセコ町役場やインターナショナルスクールのすぐそばにあります。平成24年の大規模改修工事により重油ボイラーによる集中暖房から、地中熱ヒートポンプの冷暖房システムに変更し、快適な室内環境と少ない維持費で喜ばれています。

地中熱ヒートポンプ19台のユニットが導入されています

地中熱を利用した
通年農業実現にむけて

農業のエネルギー転換も不可欠です。冬は豪雪で農業収入がなくなるため、雇用対策も含めた通年型農業の確立に、地中熱を活用する取り組みを開始しました。農業用ビニールハウスに地中熱ヒートポンプを導入し、冬季間の青物野菜等栽培を行ってデータ収集・分析をしています。これらの取り組みを、国の過疎地域等自立活性化推進交付金事業を活用して実施し、低炭素化と冬季間農業の可能性を探っている段階です。ニセコの宿泊施設で地元の農作物が使われるようになれば、イメージアップにもなります。規格外の農作物は加工することで6次産業化へつながり新たなニセコブランドの創出につながります。物の地産地消、エネルギーの地産地消、そして最終的には経済の地産地消、要は経済を地域内で回していくことがとても重要だと考えています。
こうした取り組みは行政が一方的に進めるのではなく、町民と役場がお互いを尊重して協力しあう「相互扶助の精神」が大切です。会議はみなオープン、「情報共有」と「住民参加」を基本に据えています。「住民主権の住民自治」が望ましいですね。『もっと知りたいことしの仕事』と題した予算説明書は全戸配布です。ニセコ町の一年間の仕事が住民に分かりやすく掲載されています。広大な自然に囲まれ、その中でおいしい野菜が食べられ、美しい景観を守るための環境的な配慮がなされ、人々は相互扶助の精神に満ちている、そんなニセコであるために任期をフルに活用し、常に挑戦する自治体でありたいと思っています。